彼氏がニューヨークに引っ越した

私はめちゃアホなんだけど、彼氏はすごく頭が良い。
「レイトン教授」で困ったら、いつも助けてくれる。私が考え込んでも解けない謎をスイスイ解決してくれて、本当にすごいと思う。そして誰よりも頼りになる。
だけど常識感が薄い気がする、少し個性的というか…。
表情が乏しい、あまり笑わない。
サイトで知り合って、メールのやりとりを続けて会ってみて、交際が始まってから彼が大学の先生だと知った。「准教授」らしい。「レイトン教授の助手みたいなやつ」と説明してくれた。ルーク?
そして時々「学会でスペイン行ってくる」とか、
「この写真に映ってる夜景めちゃキレイどこの?」と聞いたら「フィレンツェ」とか、「ドイツに行ってフィンランドで乗り換えたからお土産のムーミンね」とか、よく分からない、耳慣れないことを言ってきた。
交際五か月目「俺一年ニューヨークに行ってくるわ、帰ってきたら結婚しよ」と言った。は?ニューヨーク?住むの?なんでも外国で一年間研究や勉強をさせてくれる制度らしい。「嫌だな、飛行機降りた瞬間病気になりそう」と言いながら彼氏は旅立った。それから連絡は毎日ラインで取った。13時間の時差があって、こっち朝だとあっち夜だから長い話は週末にスカイプで。彼氏が設置していったモニターは、壁に貼ってある手順を見ながら操作できた。彼氏が引っ越した家賃18万円の部屋は10畳ぐらいのワンルームで「換気扇口から隣の外人の歌が聞こえる」と言っていた。「フライパンで肉焼いたら火災報知器鳴るし、部屋はエアコンがんがんで鼻くそカピカピの常夏やし、食う物ないし、だし汁飲みたい、ひもじい。早く帰りたい」とパニクるので、時々味噌汁を送った。国際便すげっ。
「今日な、道歩いてたらデッカイ黒人が俺のCD買えって言ってきて怖かったから一枚だけ買った。ビックボブと書いてた、聞かずに捨てた」と落ち込んでいる日は「ビックダディじゃなくて良かったね」と励ました。「ゴキブリが信じられないくらいデカイ」とか「公園にリスおる」とか「卵を生で食えん」とか、真夜中に来る彼氏からのラインが少しウザくなってきた頃、彼氏があっちで通っている「コロンビア大学」をググってみて、超カシコ大学と知った。つか、なんであの人は私と付き合ってんの?もっとマシな品の良い綺麗な人と付き合ったらいいのに…なんか疲れた。そう思って彼氏のラインを既読スルーすると「捨てないで…」と週末スカイプで荒れるので更に面倒臭くなった。
結局九月に行って「年末年始」と「ゴールデンウィーク」と「盆休み」と私の休みに合わせて帰ってきて、休み中ずっと私のウチにいた。そして八月末にニューヨーカーを辞めて帰ってきた。「約束通り結婚して欲しい」と言われたけど、結婚式は面倒だし挙げたくなかったから「写真だけにしてくれるならいいよ」と私は条件付きで承諾した。こんなネクラな私のどこがいいんだろう…。この際気になっている事を聞いておこうと「どうして私と?」と質問すると「この世で唯一、僕とコミュニケーションが取れる女性だから」なるほど、納得。頭痛が起きると治らないのがPMSです